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- 脳出血の治療~理学療法士から見た脳出血の対処法とは? - 2018年5月11日
こんにちは、埼玉県で理学療法士をしています。齋藤雄一郎がお話しさせて頂きます。
今回は
・脳卒中(脳梗塞・脳出血)にはなんでなってしまうのか?
・そもそも脳卒中(脳梗塞・脳出血)とはどんな病気なのか?
・予防はできるのか?
についてです。
一度にすると大変ですので、
1.脳卒中(脳梗塞・脳出血)とはどんな病気?
- 2.脳卒中(脳梗塞・脳出血)の原因は?
- 3.脳卒中(脳梗塞・脳出血)の予防方法は?
4.脳卒中(脳梗塞・脳出血)の危険因子を知っておこう
1~4の題目に沿ってお話しいたします。これら全てを読み終わると、脳卒中
(脳梗塞・脳出血)の予防方法が原因からご理解いただけるよう頑張ります!
脳卒中(脳梗塞・脳出血)の予防が重要な理由は、脳卒中(脳梗塞・脳出血)を発症するとしばしば重篤な後遺症が残ってしまい、ご本人様ご家族様の生活に良くない影響が出ることが予測されます。
重度の後遺症が残ると、寝たきり等の介護が必要な状態となり、要介護者の原因の3割以上を占めています。そして高齢化とともに、患者数の増加が予測されているからです。(参考文献1)
目次
1.脳卒中(脳梗塞・脳出血)とはどんな病気?
- 2.脳卒中(脳梗塞・脳出血)の原因は?
① 一過性脳虚血発作
② アテローム性脳梗塞
③ ラクナ梗塞
④ 心原生脳梗塞
⑤ 脳出血
⑥ クモ膜下出血
- 3.脳卒中(脳梗塞・脳出血)の予防方法は?
- 1 規則正しい生活
2 適度な運動
3 水分を十分にとる
4 規則正しい排便の工夫
5 熱いお風呂を避ける
6 食べ過ぎない
7 お酒を飲みすぎない
8 煙草を吸わない
9 動脈硬化を予防するための食事のポイント
10 処方されたお薬はちゃんと飲む
- 4.脳卒中(脳梗塞・脳出血)の危険因子を知っておこう
- 5.まとめ
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1.脳卒中(脳梗塞・脳出血)とはどんな病気?
脳卒中とは、脳にある血管が詰まって起こる「脳梗塞」と脳の血管が破れて起こる「脳出血」の総称です。そして重度に発症すると突然倒れる病気です。今まで元気だった人が突然意識を失って倒れた場合、真っ先に疑って頂きたい病気が脳卒中(脳梗塞・脳出血)です。突然意識を失う病気は他にもあります。
しかし何にせよ、できるだけ早く病気を見つけて治療を始めると、病気の後に残る後遺症が減らせることが分かっています(参考文献1)。そして一度なってしまうと、介護が必要となる原因疾患の第一位です。
脳卒中(脳梗塞・脳出血)の時に何が起こっているかというと、脳の細胞に栄養や酸素を送る血管が詰まったり破れたりして、脳の細胞に栄養や酸素が届かなくなります。すると、酸素や栄養が届かなくなった脳細胞が死んでしまいます。
脳の細胞が死んでしまった場所によって様々な症状が現れます。代表的な症状は、半身の自由がきかなくなる、半身の感覚が鈍くなる、呂律(ろれつ)が回らないなどです。
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2.脳卒中(脳梗塞・脳出血)の原因は?
脳卒中(脳梗塞・脳出血)にはいろいろな種類があります。そしてその種類によって原因が異なりますので、それぞれの原因を説明します。
①一過性脳虚血発作(いっかせいのうきょけつほっさ)の原因
一過性脳虚血発作とは、突然に半身が動かない、呂律が回らないなどの症状が現れて、数分から数十分のうちに完全に症状がなくなる病気です(24時間以内に完全に戻ると一過性で、戻らないと完成型といいます)。
この症状は脳梗塞の警告症状として考えられています。原因は、動脈硬化や心房細動(一時的に心臓の動きが悪くなる病気)により血流が悪くなることで、血の塊ができて血管を塞ぐことで起こります。
②アテローム性脳梗塞(あてろーむせいのうこうそく)の原因
アテロームとは、粉瘤(ふんりゅう)ともいわれます。血管は内膜・中膜・外膜の三層に分かれています。血管壁の内側に傷ができ、傷の中に悪玉コレステロールや老廃物がたまると、血管が盛り上がってアテロームとなります。アテロームが大きくなると血管を塞いでします。そして脳に栄養を送っている大きな動脈が、アテロームによって狭くなったり、完全に詰まったりして起こります。(図1-1)
図1-1
③ラクナ梗塞(らくなこうそく)の原因
ラクナとは「小さなくぼみ」という意味で、脳の深い部分に栄養を送っている細い血管の流れが悪くなって起こる脳梗塞です。高血圧によって動脈が厚くなったり、負荷に耐えられず血管が壊死してしまうと起こります。(図1-2)
図1-2
④心原生脳梗塞(しんげんせいのうこうそく)の原因
心臓にできた血栓(血の塊)がはがれて血流に乗っかり、脳に栄養を送る血管に詰まる病気です。正常な心臓であれば心臓の中で血液が固まり血栓ができることはまずありません。しかし心臓に病気があると、心臓の中の血流が悪くなることで血液が固まり血栓ができます。血栓ができやすい心臓病は、
・リウマチ性心臓病(弁膜症)
・心房細動
・心筋症
・心筋梗塞 です。(図1-3)
図1-3
➄脳出血の原因
長年にわたる高血圧が原因となり血管の弾力性がなくなり血管が破れてしまいます。血管が破れてしまった周囲は、血流が悪くなり細胞に酸素や栄養が届きにくくなります。
(図2-1)
➅クモ膜下出血の原因
血管の分岐点にできる風船状の膨らみ(脳動脈瘤)が破れて、頭蓋骨と脳を覆う薄い膜の間にあるクモ膜下腔の中に出血します。膜の間に出血が起きると逃げ場の無い血液は柔らかい脳を押し潰しながら膨らみます。(図2-2)
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3.脳卒中(脳梗塞・脳出血)の再発予防
脳卒中(脳梗塞・脳出血)発作を起こした人の再発率は、年間5-10%程度とかなり高いことがわかっています。そして、再発は後遺症の重症化や死亡の危険性を高めますので、何としても予防しなくてはなりません。
しかし一度の治療で完全に全ての危険因子を取り除くことは困難です。そのため、脳卒中(脳梗塞・脳出血)の再発を予防するためには、日常生活を見直し血管にかかる負担を減らすことが大切になります。
では具体的にはどのように再発を予防すればいいか、10個の項目に分けて説明します。
規則正しい生活を心がけましょう。
不規則な生活や過度な精神的ストレスは過食や多量の飲酒の原因となり、寝不足や疲労、不規則な生活は血圧を上げるホルモンを出しやすくなりますので、高血圧・動脈硬化を進行させる危険性があります。(参考文献2)
適度な運動をしましょう。
適度な運動には再発予防に必要な効果が沢山あります。適度な運動を行
うことで心臓や肺・血管を強くすることができます(参考文献3)。
そして適度な運動の刺激により筋肉や骨の強さも保つことができます。また足腰を動かすことで腸に刺激が入り、お通じへのいい影響が期待されます。
また重要な危険因子である肥満とストレスの解消にも効果があると考えらえます。(参考文献3)
水分を十分にとりましょう。
体内の水分が少なくなると、血がドロドロになり、血栓ができやすくなってしまいます。では一日にどれくらい飲んだらいいでしょうか?
目安は一日のおしっこの量と同じくらいと言われています。個人差はありますがおおよそ1リットル前後です。しかし下痢だったり、吐いてしまっり、運動で汗をかいた後は、多めの水分補給が必要となります。
注意して頂きたいのは、ジュースやコーヒー・紅茶です。ジュースには沢山の砂糖が入っていますので、糖尿病や肥満への悪影響が見込まれます。またコーヒーや紅茶には血圧を上げるカフェインが含まれているため、取り過ぎないようにしましょう。(参考文献4)
規則正しい排便をできるような工夫をする。
お通じの際の踏ん張りは、想像以上に血圧と脈拍を上げてしまいます。
その時の急激な血圧の上昇が脳出血の引き金となることがあり
ます。
便秘の対策としては
・適度な運動(大腸の活動を促す)
・程よく食物繊維をとる(大腸の活動を促す)
・水分をとる(うんこが柔らかくなるように)
・決められた時間に便器に座る(お通じの習慣づけ) などがあります。(参考文献2)
熱いお風呂を避ける。
入浴後に脱衣所が冷え切っていると、温まっている体が冷えないように血管が縮まります。
特に42℃以上の熱いお湯での入浴後は、広がっていた血管が一気に縮み、血圧が急激に上昇します。ですから、湯船の温度は40℃程度までに調整し、できれば脱衣所の温度は18~22℃に設定しましょう。
また長風呂は脱水の原因になりますので避けましょう(20分程度)。(参考文献3)
食べ過ぎない。
肥満は糖尿病、高脂血症、高血圧を助長させる原因であり、動脈硬化の危険因子となります。食べ過ぎないためには、一日3回の食事をなるべく決められた時間に
決められた量を習慣にする。間食はしない、料理に使う油を減らす、海藻や色々な種類の野菜を食べる、などの対策があります。
お酒を飲みすぎない。
適度なアルコールはコレステロールを下げるなどの良い働きもあります。しかしアルコールは脳血管を縮めてしまうとも言われており、毎日1.5合以上飲酒をする人は、しない人に比べて3倍以上脳出血が発生しやすいと言われています。
また飲酒量の多い人ほど高血圧になりやすいことが分かっています。そして飲酒は余計なカロリー摂取につながります。(参考文献4)
煙草を吸わない。
煙草にはニコチン、タール、一酸化炭素という有害物質が含まれています。ニコチンは血管の収縮・心拍数の
増加、血圧の上昇を引き起こします。
そして、ニコチンには血液中の血を固まり易くする作用があり、脳梗塞の危険性を高めます。また動脈硬化を予防する善玉コレステロールを減らしてしまう作用があり、
脳出血・脳梗塞共に危険性を高めます。
動脈硬化を予防するための食事のポイント
減塩食を心がけましょう。霧吹きタイプの醬油注しを使ったり、出汁を使ってうまみを増やし、塩分を減らしましょう。
コレステロールの少ない食事を心がけましょう。揚げ物を控えたり炒め物に使う油を減らします。バランスの良い食事を心がけましょう。
蛋白質はお肉だけでなく、お魚・豆腐・納豆なども食べましょう。野菜は温野菜にすると沢山食べやすくなります。体調を整える働きをする海藻を食べましょう。炭水化物は抜くのではなく、量を少し減らしましょう。(参考文献3)
処方されたお薬はちゃんと飲む
なぜお薬を飲むのでしょうか?お薬を飲むのは脳卒中(脳梗塞・脳出血)の再発予防と後遺症を減らすためです。ですから、なるべく決められた時間に、決められた量を飲みましょう。
もし一度飲み忘れてしまっても、次の時間に2回分のお薬を一度に飲んだりしないでください。またご自身の判断でお薬を飲む量や種類を変更しないでください。
上手に飲むコツとしては、コップ半分以上のお水と一緒に飲むと、お薬の効果も発揮しやすくなります。また錠剤やカプセルは噛まないでください。錠剤やカプセルは胃で溶けずに腸で溶けるように工夫されています。噛んでしまうと台無しになってしまいますのでやめてください。
(参考文献2)
基本的には規則正しい生活を送り、適度な運動を行う生活習慣の改善と食事療法です。食事療法によっても十分な改善が見られないときには、降圧薬、血糖降下薬、脂質低下薬などの薬物療法を行う必要があります。
- 脳卒中(脳梗塞・脳出血)の危険因子
脳卒中(脳梗塞・脳出血)にかからないために、危険因子を知って頂きたいと思います。脳卒中(脳梗塞・脳出血)には自分で管理できない危険因子と、管理できる危険因子があります。
管理できない危険因子は加齢とご家族の病気歴です。特に、ご家族に脳卒中(脳梗塞・脳出血)を発症されている方がいらっしゃる場合は、次に紹介する管理できる危険因子を知り、管理していくことが重要になります。
管理できる危険因子は、
・高血圧
・糖尿病
・心臓病
・脂質異常
・多血症
・悪い生活習慣です。
高血圧
高血圧は脳卒中(脳梗塞・脳出血)の最も危険な危険因子と言われ
ています。高血圧の重症度に応じて脳出血だけでなく脳梗塞の発症率も増加します。
ルーズベルト大統領は、1945年2月4日から11日に行われたヤルタ会談の後に、上の血圧が350mmHgぐらいまで上昇し、1945年4月12日に脳出血で亡くなりました。上の血圧が上がれば上がるほど、死亡率が上がって行きます。(表1-1)(参考文献4)
表1-1
糖尿病
糖尿病のある人は、ない人に比べて2倍以上多く脳梗塞を発症します。脂質異常や肥満も合併しやすく、さらに高血圧を合併するとますます危険性は増します。(表1-2) (参考文献4)
表1-2
脂質異常
総コレステロールの高値、善玉コレステロールの低下はアテローム血栓性脳梗塞の危険性を高めます。そして低コレステロール・低栄養状態は、脳出血の危険 性を高めます。(表1-3) (参考文献4)
表1-3
心臓病
心臓の動き方がリズミカルでなくなることにより、心臓の中で血の流れが悪くなり血の塊ができてしまいます。心臓でできた血の塊が脳の血管に詰まってしまうことを心原性脳梗塞と言います。
心臓病を持っている人は、そうでない人の5~15倍脳梗塞にかかりやすいことがわかっています。(参考文献1)
生活習慣(メタボリックシンドローム)
多量の飲酒や喫煙は脳卒中(脳梗塞・脳出血)の危険性を高めます。肥満も糖尿病・高血圧・高脂血症を助長し動脈硬化を促進します。またある種の経口避妊薬により、くも膜下出血、脳梗塞などが引き起こされることもあります。特に喫煙者でその危険性が高いとされています。(参考文献4)
5.まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。気になっていたこと、疑問に感じていたことは解消されましたでしょうか?脳卒中(脳梗塞・脳出血)の予防には、生活習慣を見直し血管への負担を減らすことが必要不可欠です。特にご家族や近い親戚の方に脳卒中(脳梗塞・脳出血)を患った方がいらっしゃいましたら要注意です。しかし、長く付き合う覚悟で少しずつ生活習慣を改善できれば、確実に予防ができますので、参考にしてみてください。皆様の健康を心よりお祈り申し上げます。
参考文献
参考文献1)脳卒中(脳梗塞・脳出血)の再発を防ぐ!
知っておきたいQ&A76 橋本洋一郎 2009/4/1
参考文献2)脳卒中(脳梗塞・脳出血)ことはじめ 山口武典 1997/5/15
参考文献3)脳卒中(脳梗塞・脳出血)の発症予防と再発予防 北川一夫
臨床と研究・93巻1号(平成28年1月)
参考文献4)生活習慣病の治療により心筋梗塞・脳卒中(脳梗塞・脳出血)は
予防できる小嶋正義 日農医誌 65巻6号 1118~1122頁 2017/3


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