ご家族で取り組むことが出来る脳梗塞後遺症の機能訓練リハビリ

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西廼 健

西廼 健

・講師資格: 理学療法士、脳卒中認定理学療法士、脳梗塞リハビリセラピスト ・居住地 大阪 ・活動地域 近畿圏を中心にどこへでも ▷執筆者プロフィール詳細

 脳梗塞になると、運動麻痺感覚障害など様々な後遺症が現れます。ご家族様としては初めてみる症状でどのように対応すれば良いかもわからない状況だと思います。

 

 

 

 発症後すぐは全身状態の管理など、医療の専門家が関わる必要があります。

 

 

 症状が安定し回復期リハビリに転院すれば毎日充実したリハビリを受けることができます。回復期リハビリで症状が改善すれば自宅退院となります。

自宅に退院した後は入院中とは違い、リハビリの回数や時間が非常に少なくなります。

 

 

 そこで退院後にリハビリの大きな役割を果たすのは「ご家族様」です。

 

 

 今回は退院後のリハビリに大きな役割を果たす、ご家族様で取り組むことが出来る、脳梗塞後の後遺症である運動麻痺に対するリハビリについて紹介したいと思います。

 

 

解説させていただくのは『脳梗塞後遺症の改善を諦めず「楽に動く喜び」を広め当事者と家族のお悩みを解決し笑顔を広めるリハビリ専門家』理学療法士の西廼健(にしのたけし)です。

 

 

私は、15年間、発症直後の急性期リハビリから回復期リハビリ、在宅での訪問リハビリと発症からの経過が様々な脳梗塞を患った方とのリハビリを経験してきました。その中で蓄えた経験や知識を元に説明していきます。

 

 

目次

1、ご家族様と退院後の関わり方

1−1、コミュニケーションは難しい

1−2、うまくコミュニケーションを取る方法

 

2、機能訓練とは?

 

3、「脳」に対するリハビリ

3−1、「脳」に対するリハビリが必要な理由

3−2、脳梗塞後の改善に重要なのは「感覚」

3−3、運動が起こる仕組み

 

4、ご家族様が取り組むことが出来るリハビリの紹介

4−1腕のリハビリ(肘を伸ばす)

4−2椅子からの立ち上がり方

 

5、まとめ

 

 

1、ご家族様と退院後の関わり方

 退院後、リハビリの時間が短くなり自宅で何をすれば良いの?

 

 

まだまだ、歩くのが不安定なのにリハビリの時間が短くなるし回数も少ない・・・

 

 

何か良くするための方法がないのか?

 

 

けど、リハビリって専門的で難しい・・・

 

 

 ご家族様が脳梗塞・脳出血をお持ちの方に少しでも良くなってほしい!という熱い気持ちはあるけれど

 

”何をすれば良いのか?”

 

”どうすれば良いのか?”

 

という事で多くのお悩みを抱えていると思います

 

 

脳梗塞や脳出血になると体に現れる症状として「運動麻痺」があります。

 

 

しかし運動麻痺以外の症状も隠れていることがあります!

 

 

脳というのは小さな細胞同士が手と手を取り合って情報交換をしています

 

 

例えば、体の動きをコントロールしている細胞が脳梗塞や脳出血でダメージを受けてしまうともちろん運動麻痺が起こります。

 

 

しかし体の動きをコントロールしている細胞が死んでしまうと、それと隣り合っている動きの細胞以外の細胞の働きも低下してしまいます。

 

 

例えば

・少し話しにくくなる

・会話が聞き取りにくくなる

・すぐに疲れてしまう

・頭がぼーっとしているなど

 

 

コミュニケーションが取りにくくなることもよくあります。

「体が動きにくい」という辛さもありますが「コミュニケーションが取りにくい」ということも辛いと思います

 

 

1−1、コミュニケーションは難しい

 

「コミュニケーション」についてと説明します。

 

 いつも何気なく「会話」をしていると思いますが、脳梗塞や脳出血になると、何気ない「会話」をすることが難しくなることがあります。

それはなぜか???

 

コミュニケーションを取るためには、脳の細胞同士が情報交換しています。

 

 

「会話をする」ということは

1:話をきく

2:内容を理解する

3:理解した上で何を話すか考える

4:声に出す

 

簡単に書いても4つの過程があります!

 

 

この過程を進めるために、脳の細胞同士で情報交換しているのです。

 

 

細胞の働きが弱くなると、その情報をやりとりするスピードが遅くなったり、情報をやりとりする事にものすごくパワーが必要となります。

 

 

では、情報交換がスムーズにできないのであれば

スムーズにできるくらいの情報量に変更すれば楽に情報のやりとりができるはずです。

 

 

1−2、うまくコミュニケーションを取る方法

脳梗塞や脳出血を持った方に話しかける時に注意することがあります。

 

「何に注意する必要があるのか?」

 

それは・・・・・

 

 

ゆっくり丁寧に話しかけること!

 

 

えっ?それだけ?

 

と思った方もいらっしゃると思いますが、ゆっくり丁寧に話しかけることで情報がゆっくり伝わりますし、丁寧に話しかけることで脳の中での情報交換はスムーズになります

 

 

早く話しかけられると、次々に新しい情報が耳から入ってくるので情報を処理したり、情報をやりとりすることが難しくなるのです。

 

 

このようにコミュニケーションを取るためには

「ゆっくり丁寧に話しかける」ことが重要となります。

 

 

コミュニケーションはこのように脳の働きが重要となります!

 

 

情報のやりとりや処理をする事で脳は物事を把握したり、次に起こす行動なども考えます!

脳が情報のやりとりや情報処理にパワーを使ってしまうと、すぐに「疲れやすい」という事になってしまいます。

 

 

これから、ご家族様で取り組むことができる、リハビリ方法を説明していきますが、リハビリをする前にまずは、このようにコミュニケーションをゆっくり取ることで、脳を混乱させずに、疲れないように関わることが重要となります。

 

2、機能訓練リハビリとは?

機能訓練とは

病気・怪我・老化などで喪失または減退した機能を改善するために行う、運動療法などの訓練のことをさします。

 

 

例えば、骨折などで安静を余儀なくされ、筋力が弱くなったり、関節が硬くなった場合には、弱った筋力を改善させるために筋トレや、硬くなった筋肉をほぐすマッサージや、ストレッチが行われます。

 

 

 

老化により体力が低下したり、筋力が弱くなっている場合にも、今よりも筋力が低下しないように筋トレを行なったり、体力が低下しないように歩く練習やみんなで体操などが行われます。

 

 

3、「脳」に対するリハビリ

 脳梗塞の機能改善のためには「脳」に働きかけるリハビリが必要となります。

 

それは何故かということを説明しますね。

 

 

3−1.「脳」に対するリハビリが必要な理由

 脳梗塞により、脳の細胞がダメージを受けてしまうと、運動麻痺が起こってしまう事があります。

 

 

 筋肉や関節に直接的に問題はないのですが、脳の細胞がダメージを受ける事で、脳から体を動かす指令がうまく出なくなり運動麻痺が起こります。

 

 

 そのため、脳梗塞や脳出血により麻痺という症状に対して、機能訓練のリハビリを行おうと思うと、元々の原因である「脳」に対するリハビリが必要となるのです。

 

 

 筋力トレーニングやマッサージ、ストレッチは筋肉に対するリハビリとなります。

 

 

 問題は「脳」になるので、このようなリハビリは脳梗塞の機能改善のリハビリとはなりにくいのです。

「脳」に対するリハビリって言われても、想像がつかないと思います。

 

「脳」に対するリハビリについて説明しますね。

 

 

32、脳梗塞後の改善に重要なのは「感覚」

脳梗塞後の麻痺の改善には「感覚」が重要と考えています。

 

 感覚をどうするのか?

 

 それは、体を動かすときの自分の体の感覚をしっかり意識することが重要となります。

 

 脳梗塞で脳にダメージがない方の運動が起こる仕組みがわかると、理解することができるでしょう。

 

 

3-3.運動が起こる仕組み

運動が起こる時には大きく3つの過程があります。

感覚を感じる

運動のプログラムを作成

動きの指令→筋肉へ

 

 上記の図のように、体を動かすためには3つの過程があります。「まっすぐ立つ」ことを例に挙げると、「両方の足の裏から地面に足の裏がしっかり着いてますよ」という感覚が脳に送られます。その感覚を元に「どこの関節にどれくらい力を入れれば立つことができるか」という運動のプログラムが脳の中で作られます。それができて、やっと体を動かす指令が脳から筋肉に送れらます。

 

 

 つまり、一番はじめの「感覚を感じる」部分で間違った感覚を感じたり、感覚を感じなければ、そのあとの運動のプログラムも間違ってしまい、結果、間違った運動の指令が筋肉に送られてしまうことになります。

よって、「感覚を感じる」ということが重要なポイントとなることがわかると思います。

 

 

 こうした“体の感覚”は、日頃は意識することがないために、ゆっくりした動きの方が意識しやすくなります。

 

 

 つまり、脳梗塞後の麻痺の改善のためには、ゆっくり動きながら体の感覚を意識して動くことが有効ということになります。

 

 

 2012年に様々な研究を分析することによって脳梗塞後の麻痺の改善に効果的なことを導き出した研究によると、脳梗塞後の麻痺の改善のためには関節の動く感覚や足の裏の触れる感覚といった、“体の感覚”を意識することが有効と言われています(参考文献1)

 

 

4、家族で取り組むことができるリハビリ

 リハビリというと、「専門家でないとできない」「難しそう」といったイメージがあるのではないでしょうか?

 

 「脳」に対する機能訓練リハビリは体の感覚を意識することがポイントとなります。声の掛け方やゆっくり体を動かす時に体の感覚に気をつけることで、ご家族様でも「脳」に対するリハビリを安心、安全にできる方法があります。実際にご家族の方に使って頂きたい声かけのフレーズも紹介していきます!

 

 

4−1、腕のリハビリ(肘を伸ばす)

 脳梗塞になると、麻痺側の肘が曲がってしまって硬くなってしまうことがあります。

 

その肘を伸ばそうとしてギューっとストレッチをしているのではないでしょうか?

 

ストレッチをした時は伸びるけど、すぐに戻ってしまう、伸ばした時は良いけど、体を動かすとまたすぐに曲がってしまうといったことがよくあります。

 

今回は、肘をギューっと伸ばさずに楽に伸ばす方法で、しかも少し動いても曲がりにくくなる方法をご説明します。

 

 

①麻痺側の手首と肘を持って伸ばして、肘の硬さや伸びにくさを確認

 

 

②肘が伸びてくる(肘の関節が開いてくる)感覚があるかどうかを聞いてください

 

 

 

③感覚がわかりにくいということであれば、肘の折れ目が開いてくるかどうか注意するように声かけをしてください。

 

家族の声かけ:「今から肘の折れ目が開いてくることを気にしてください」

 

 

 

④肘が開くことを注意してもわかりにくいな。ということであれば、反対の良い方の腕で肘が開いてくる感覚を確認します。

⑤良い方の腕で肘の感覚を確認した後に、良い方の腕の感覚をイメージしてもらいながら麻痺側の肘を同じように動かしてください

 

 

 

⑥①で確認した伸ばしにくさや硬さと比較して軽減していれば大成功です。

 

ポイントはゆっくり行うことと、無理に引っ張らないことが重要です。

 

詳しくは動画を確認ください。

一連流れを詳しく解説しています

 

 

4−2、楽に椅子から立つ(足のリハビリ)

 椅子から立つ時に、手すりを引っ張って良い方の足で立ち上がってしまっていませんか?

 

 麻痺側の足を使わずに立ってしまったり、逆に麻痺側の足に力が入りすぎてしまって、突っ張ってしまうことがあります。

 

 今回は楽に立って、麻痺側の足をうまく使いながら立つ方法を説明します。

 

①立ち上がらずに立つ途中のお辞儀の時点一度止まってください

 

 

②この時に体がどれくらい横に傾いているか確認してください

 

 

③体が傾いている状態で麻痺側の足で支えて立てるような感覚があるか聞いてみてください

 

家族の声かけ:「今の状態で麻痺側の足で支えて立てそうですか?」

 

立てそうにないと言う答えでしたら④のステップに進みます。

 

 

 

④この時にお尻から太ももの裏に体重を感じられていない可能性があります。

もう一度お辞儀をして、麻痺側のお尻と太ももの裏が椅子と当たって体重を感じることができているか聞いてみましょう。

 

家族の声かけ:「麻痺側のお尻や太ももに体重をドシッと感じますか?」

 

 

 

⑤「あまり感じない」ということがあれば、お辞儀をしていく時に麻痺側のお尻や太ももの裏に体重を感じるように説明してください。

 

家族の声かけ:「麻痺側の太もも裏にドシッと体重を感じるようにゆっくりお辞儀をして〜」

 

 

 

⑥感じるように意識しても難しい場合は、良い方のお尻と太ももの裏を確認しましょう。

 

家族の声かけ:「良い方のお尻と太ももに体重がドシッと感じる?」

 

 

 

⑦良い方の体重の感じ方を確認した後に、良い方の感覚と同じように麻痺側もお尻と太ももの裏に体重がドシッと感じるように意識しながら、もう一度お辞儀をしてみましょう

 

 

 

⑧そうすると、初めのお辞儀の時と比べて、体の傾きと麻痺側の足で支えた感じを聞いてみましょう

 

 

⑨初めて比較して体の傾き、麻痺側の足で支えた感じがよくなっていれば、そのままゆっくり立ち上がってください

 

詳しくは動画を確認ください。

一連流れを詳しく解説しています

 

 

5.まとめ

 回復期リハビリ病院に入院中はリハビリ時間も長く、ほぼ毎日リハビリを行う事ができます。しかし、退院するとリハビリの回数や時間が入院中に比べて非常に少なくなってしまいます。そこで退院後のリハビリに大きな役割を果たすのは「家族」です。

 

 退院後はどのようにサポートすれば良いのか?家族として何ができるのか?悩むことも多いと思います。特にリハビリとなると、専門的で難しいというイメージがあるかもしれません。

 

 今回は、脳梗塞の運動麻痺の症状に対して、ご家族様でもできる方法を紹介しました。

 

 

「脳」に対するリハビリのポイントは体の感覚を意識する事です。

 

 

 体を動かすときに体の感覚を意識するようにご家族様が声かけを行う事で、脳に対するリハビリとなります。

 

 

 

【参考文献】

1)Sharma,N.,Cohen L.G.:Recovery of motor function after stroke.Dev.Psychobiol 54:254-262,2012

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西廼 健

・講師資格: 理学療法士、脳卒中認定理学療法士、脳梗塞リハビリセラピスト ・居住地 大阪 ・活動地域 近畿圏を中心にどこへでも ▷執筆者プロフィール詳細

もう無駄な努力なんてしなくていい!「脳梗塞から半年経ってても楽に動けた!」という感想続出のヒミツを教えます『自宅でできる動きのコツ』リハビリ講座

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