脳出血の治療~理学療法士から見た脳出血の対処法とは?

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齋藤 雄一郎
・資格:理学療法士 ・居住地:埼玉県越谷市 ・活動地域:埼玉県川口市・越谷市を中心にどこへでも ▷執筆者プロフィール詳細

 こんにちは、埼玉県で理学療法士をしています。齋藤雄一郎です。

 

 急に発症し、時に重い後遺症を残す脳出血。

今回は、ご家族で脳出血になられた方、ご友人が脳出血になってしまった方のために、

脳出血の治療について書かせて頂きます。

 

「脳出血はなぜ起きるのか?」「起きてしまった後にどのような治療を受けるのか?」

「どのくらい治療に時間がかかるのか?」

 

突然脳出血という病気に直面された方々のお力になれるように、

わかりやすく解説させていただきます。

 

目次

  • 1.  脳出血とは?
  • 2.  脳出血の種類と起こるしくみ 
  • 3.  脳出血の検査と診断
  • 4.  脳出血の場合かかる病院
  • 5.  病気を発症してからの治療の流れ
    •      ①急性期 ②回復期 ③生活期
  • 6.  脳出血発症後の治療
    •      ①手術をする治療方法 ②手術をしない治療方法 ③リハビリ開始
  • 7.  脳出血の起こる場所によって出やすい症状がわかる
    •      ①被殻(ひかく)に出血した時の症状
    •      ②視床(ししょう)に出血した時の症状
    •      ③大脳で出血した時の症状
    •      ④小脳で出血した時の症状
    •      ⑤脳幹(のうかん)で出血した時の症状
  • 8.  脳出血に気がついたらどうするか?
  • 9.  発症後、病状が安定してからの治療はリハビリが大切 
  • 10. 脳出血の予防方法
  • 11. まとめ

 

1.脳出血とは? 

 脳の細胞は血液から栄養をもらって働いています。脳出血とは、脳の細胞に栄養を送るための動脈が破れて出血し、脳の細胞に血液が送れなくなることで直接

ダメージを与えてしまう病気です。

 

正常な脳に栄養を送る血管の壁はとても強いので、一般的な高血圧の2倍を超える血圧の上昇があっても破れません。しかし長年の高血圧、飲酒、喫煙、塩分の高い食事、油の多い食事により血管が硬くなってしまうと、不意な血圧の上昇により脳に栄養を送る血管が

破れる危険性が上がります。 

                              図1:脳出血のCT画像

 

 昨今医療の進歩により、1960年代にくらべると発症後に亡くなることは少なくなりました。しかし、後遺症に悩まれる患者様は増えています。ですから、起きてしまった症状をいかに軽くするか?二度と脳出血を起こさないためにどうするか?が大切になります!

(参考文献1)

 

  • 2.脳出血の種類と起こるしくみ

・高血圧性脳出血

 脳出血の代表的なもので、長年にわたる高血圧が原因となり血管の弾力性がなくなり血管が破れてしまいます。血管が破れてしまった周囲は、血流が悪くなり細胞に酸素や栄養が届きにくくなります(図2‐1)。

 

・くも膜下出血

 血管の分岐点にできる風船状の膨らみ(脳動脈瘤:血管の分岐点は負担がかかります)が破れて、頭蓋骨と脳を覆う薄い膜の間にあるクモ膜下腔の中に出血します。膜の間に出血が起きると逃げ場の無い血液は柔らかい脳を押し潰しながら膨らみます。(図2‐2)。

                            図2:脳出血の略図

 

出血や出血により押し潰されてしまった脳細胞に、酸素・栄養が届かなくなり細胞が死んでしまいます。一部でも脳細胞が死んでしまうと、沢山の脳細胞と繋がりあうことで複雑な仕事ができる脳の働きは低下します(参考文献2)。

 

  • 3.脳出血の検査と診断

脳出血の診断は、既往歴、現病歴、症状(大項目の6.脳出血の起こる場所によって出やすい症状がわかる)からある程度の診断をすることができます。脳梗塞と違い、症状がすぐに現れることが多いからです。

しかし出血部位を正確に診断するためには、画像診断が必ず必要になります。画像診断の種類にはCTとMRIがあります。また検尿、採血、心電図などの検査も行われ、どんなお薬が必要か?食事の栄養バランスをどうするかなどが決められます。

                             図1:脳出血のCT画像

  • 4.脳出血の場合かかる病院

 脳出血をした場合にかかる病院は、神経内科脳神経外科脳卒中科のある病院です。

そして発症してからの時期に合わせて3種類の病院や施設があります。

 

急性期病院

発症してすぐにかかるのが急性期病院です。命の危機を回避するために投薬や手術などの治療が施されます。

 

回復期病院

命の危険を回避し、ある程度症状が落ち着いてから入るのが回復期病院です。病気の症状に合わせて日常生活を取り戻していく過程です。かなり個人差があります。

 

生活期の病院

回復期での治療が終了し、症状の悪化を防いだり、回復期で回復しきれなかった日常生活動作を取り戻すために、生涯行う生活期の病院・施設があります。

 

  • 5.病気を発症してから治療の流れ

                        図3-1:脳出血を発症してからの経過

 

脳出血を発症すると大まかに急性期・回復期・生活期の3段階に分かれて治療を受けることになります(図3-1)。またそれぞれの時期に専門の病院に転院したり、自宅に帰ってから外来で治療・リハビリを受けたりする場合があります。発症直後は図3-2のように「血圧」「脈拍」「質問に答えられる状態かどうか」「しびれ」「頭の中の出血の状態を確認する画像」などの検査が行われ、手術が必要かどうか医師により判断されます(参考文献2,3)。

 

    

図3-2:手術をする治療法と手術をしない治療法

 

・急性期

発症から2,3週間程度は急性期と言われ、命の危機を回避するためにお薬や手術での治療を中心に、主に医師による治療が行われます。そして安全を第一に、寝たきり予防のリハビリが行われます。

具体的には、ゆっくり起き上がりベッドサイドに座る時間をだんだん伸ばしていきます。この段階でも状態が良くなると、自宅から病院に通い治療を受けることが可能です。

・回復期

発症から3週間~4ヶ月程度は回復期と言われ、命の危機を回避した後に脳出血が起きた後になりやすい病気を予防するための治療が続きます。 肺炎 胃や腸の中での出血が起きやすいので、血液検査などで確認したあとに、医師が必要であると判断すると点滴や飲み薬で予防を行います。

              

 そしてうまくできなくなってしまった動き(寝返る・起き上がる・立ち上がる・歩くなど)を、もう一度できるようになるため、個別に訓練を受けます。この時期はリハビリが主な治療となります。

 

一言で脳出血と言いましても、個人により様々な症状が出ます。ですから、セラピストが患者様一人ひとりを検査し、症状に合わせたリハビリを行います。

読む・話す・聴くなど言葉のリハビリ、食事・トイレ・料理・更衣などのリハビリ、立ち上がる・立ったままで手を伸ばす・安全に歩くリハビリなど、日常生活に必要な動作の訓練を中心にほぼ毎日、体調に合わせて多い時で一日3時間行います。急性期からここまでの治療は、医療保険で治療が受けられますので、ご負担は3割程度です。

     

 

・生活期

発症から4~6ヶ月程度は生活期と言われます。再発の予防のために血圧の管理、食事療法、運動療法を行います。この時期になると体の動かしやすさの回復はゆっくりになりますので、根気よく肩の力を抜いて続ける必要があります。

 

リハビリの方法としては、自宅から通院・通所でリハビリを行う、セラピストが自宅に来てリハビリを行う、自分に合ったリハビリを選んで受けるなどがあります。介護保険を利用したり、自由診療でのリハビリとなります。

 

回復がゆっくりになっているこの時期に、治療・リハビリを継続していくことは、ご本人様にとってもご家族様にとっても生活の質を向上させるためにとても大切であると考えられます。退院後にまったく運動をしなくなってしまうと、入院中にできていたことができなくなることがあります。

        

 

  • 6.脳出血発症後の治療法

  • ①手術をする治療法(外科的治療法)

 

      図4-1        図4-2         図4-3

 

被殻出血の場合(図4-1)

出血した血の塊が31ml以上であると手術になります。出血が大きい場合は頭を大きく開いて血を吸い取る手術が行なわれます。

 

視床出血の場合(図4-1)

 出血が脳全体の循環を悪くしてしまうと、管で血を吸い取る手術が行なわれます。被殻出血の手術の時よりも小さな傷で済みます。

 

大脳皮下出血の場合(図4-1)

 血の塊が大きく脳が腫れてしまい圧迫された脳が形を変えてしまうほどの圧を受けるようであると、手術で血の塊を取り除きます。

 

小脳出血の場合(図4-2)

意識がしっかりしていても突然意識を失い、急速に悪化して命の危険にさらされる可能性があるため、出血の大きさが直径3㎝を超える場合と、症状が徐々に悪くなっている場合は手術が必要になります。

 

脳幹出血の場合(図4-3)   脳の深いところにあり手術が困難です。

 

  • ②手術をしない治療法(内科的治療)

  脳出血が起こると出血した量に関わらず、出血した場所の周囲が腫れています。腫れが大きくなると、周囲の悪くなっていない脳細胞を圧迫してダメージを与えてしまいます。

 

 これを防ぐために呼吸・血圧・おしっこ・お通じの管理をお薬などで行い、出血した脳を守ります。

 まず呼吸ですが、病気により呼吸の回数が減ってしまうと、血液の中の二酸化炭素が増えてしまいます。二酸化炭素が増えてしまうと酸素が不足するため、血流を増やして脳の血圧を上げます。その結果浮れを悪化させてしまうため、二酸化炭素が増えないようお薬や呼吸を手伝う機械で治療します。

 

 

 次に血圧です。急性期の血圧はストレスや脳内圧上昇により高くなりやすくなります。血圧上昇は、出血が増えたり腫れが増える可能性があるため、お薬による治療が行われます。

 

 

 そしておしっことお通じです。脳出血後に肩を叩いたりしても目を覚まさない状態であると、おしっこが自然に行われなくなってしまうことがあります。放っておくと体内の水分量が増え、血圧が高くなってしまいます。

 また便秘になってしまうとその後のお通じの時にいきみ、血圧が上がってしまいますので、再出血予防のためにお薬でスムーズなおしっことお通じを促します(参考文献2,3)。

 

③リハビリ開始

 血圧が安定しても、破れた血管のかさぶたが安定していない時期からリハビリを始めますので、医師・看護師と連携を取り、安全を確認した上で積極的に寝たきりを防止します。

 

 まずは全身の各関節を動かして、固くならないよう予防します。少し動いても血圧の変動に問題ないようであれば、徐々に起き上がりベッド上で腰を掛けることから始まります。また口や喉にも麻痺の影響は出ますので、飲み物やご飯がむせずに飲み込めるように練習します。そしてうまくお話しができない方は、言葉がうまく話せるよう練習をはじめます(参考文献2,3)。

     

 

  • 7.脳出血がおこる場所によって出やすい症状がかわる!

脳出血の症状とチェックポイント

脳は部位により働きが細かく・個性的に分かれていますので、発症した部位により症状が変わります。それでは詳しく紹介致します。

     

     図4-1      図4-2        図4-3

 

被殻(ひかく)に出血した時の症状(脳出血全体の40%)   

 被殻(ひかく)の主な働きは、大脳から来る運動の指令を調整してスムーズな運動を行えるようにすることです。ですから、症状としては運動がうまくできなくなることが多いです。この為、具体的には右被殻(ひかく)出血なら左側に、左被殻(ひかく)出血なら右側の半身に運動障害が出現し、さらに感覚障害も認められます。また特に左側の出血では、上手く話せなくなったり、道具の使い方が分からなくなったり、目の前にある物を認識できなくなったりします。

 

視床(ししょう)に出血した時の症状(脳出血全体の30%)

 視床(ししょう)には、全身の感覚の情報を集める中継地点があります。そして集まった情報を整理して、大脳へ送る役割も果たします。そのため、症状としては出血のあった部位の反対側に(右出血なら左半身に、左出血なら右半身に)感覚の障害が現れます。その他に、強かったり、弱かったり様々な程度の意識障害、左側の視床(ししょう)に出血があると言葉が出にくくなったり、両目が勝手に下を向いてしまうなどの症状が見られます。

 

・大脳で出血した時の症状(脳出血全体の10%)

 大脳は、役割と領域が大きく前頭葉・側頭葉・

後頭葉・頭頂葉の4つに分かれます。

          

 

 

 

前頭葉の主な働きは、考える・言葉を発することにあります。そして、右脳は左半身を左脳は右半身を担っています。ですから、症状としては出血と反対側の体の動きにくさとしゃべりにくさが出ます。

 

側頭葉の主な働きは、聴いたもの・見たものを理解することです。よって症状としては、言葉の理解と話しにくさがあります。

 

後頭葉の主な働きは、見たものを理解することです。出血があった部位により、見えていたものが見えなくなります

          

頭頂葉の主な働きは、全身の感覚と見える景色と聞こえる音の情報を整理することです。そして、右脳は左半身を左脳は右半身を担っています。症状は、日常の何気ない動作ができなくなる・読み書きができなくなる、右側の脳が出血すると、左側にあるものを全く認識できなくなるなど、複雑な症状になります。

 

・小脳で出血した時の症状(脳出血全体の10%)

 小脳の主な働きは、手・足・体・目の動きの調整とバランスです。ですから、障害が起こると、スムーズに動けない、頭痛・嘔吐・ぐるぐる回るようなめまい、歩きづらさなどの症状が現れます。

                 

・脳幹(のうかん)で出血した時の症状(脳出血全体の10%)

 脳幹(のうかん)の主な働きは生命維持にあります。ですから症状としては、両目の瞳孔が縮む、急激な意識障害、両手足の強い麻痺などがおこり命の危険性が高いです。

 

8.脳出血に気づいたらどうするか?

発症からできるだけ早く診察を受ける必要があります。

・突然うまく話せない

・半身の自由がきかない

・左半分が見えない

・相手の言っていることが理解できない

・何かで叩かれたような激しい頭痛・吐き気を伴うめまい

などの症状が見られたら、様子を見ずにできるだけ早い受診をお勧めします。

一刻も早く救急車を呼んで下さい。

 

 

9.発症後、病状が安定してからの治療はリハビリが大切 

 退院後のリハビリは、厚生労働省が定める脳卒中治療ガイドライン2015でも推奨されています。一般的に言われている回復期が過ぎても、ゆっくりになりますが、回復が止まるわけではありません。この時期には各個人に合った適切なリハビリテーションを受けることにより、麻痺の回復が期待されます。

 

しかし、単に運動を反復するだけでは脳の活性化は起こらないので、課題を反復する中で工夫や思考錯誤するような働きが必要になります(参考文献4)。

 

 それでは、具体的にはなにをすれば良いのでしょうか?歩きにくい方は沢山歩けば良いのでしょうか?手が開かないからストレッチをずっとしていれば良いのでしょうか?今までも沢山リハビリしてきたけどあまり効果を感じなかった方は、練習している運動の種類や難しさがあっていなかった可能性があります

 

例えば歩くためには安定した立位が必要であり、安定した立位のためには安定した立ち上がりが必要であります。

 

「自分はどこら辺ができていないか?」

「なぜこの運動なのか?今のセラピストは説明してくれていますか?」

 

もし明確な答えが返ってこないのであれば、相性の良いセラピストを探してみてはいかがでしょうか?セラピストを選択する権利あなたにあります。迷うようであれば、「動きのコツ」では丁寧にオーダーメードのリハビリを提供していますよ。

 

10.脳出血の予防方法

 一度脳出血を起こした方は、慢性的な高血圧・高脂血症・悪い生活習慣により血管がもろくなっているため、血管への悪影響を減らさないと脳出血を再発しやすくなります。

 

 予防方法は規則正しい生活を送り、適度な運動を行う生活習慣の改善と食事療法です。食事療法によっても十分な改善が見られないときには、降圧薬、血糖降下薬、脂質低下薬などの薬物療法を行う必要があります。

 

 

他の具体的な方法

・水分を十分にとる。

・規則正しい排便をできるような工夫をする。

・熱いお風呂を避ける。

・食べ過ぎない。

・間食はしない。

・お酒を飲みすぎない。

・煙草を吸わない。

・動脈硬化予防のため減塩、低コレステロールの食事を心がける。

・処方されたお薬はちゃんと飲む   

 

 

11.まとめ

 最後までお読みいただきありがとうございます。気になっていたこと、疑問に感じていたことは解消されましたでしょうか?

 

 脳出血の治療には、多くの時間がかかります。そして発症した時に望んでいた状態までの回復が長く険しい道のりとなることもあります。

 

しかし治療やリハビリによって脳の回復は続きます。諦めないでください。焦らず、肩の力を抜いて、長く付き合う覚悟で少しずつ進んでいきましょう。

 

 根気よく続けるためのパートナーとして、現在のリハビリは自分に合っていますか?見直しは悪いことでも失礼でもありません。自分の回復を任せられる、リハビリに出会えるよう、心よりお祈り申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

 

参考文献1)脳卒中理学療法ベスト・プラクティス 奈良 勲 2014/10/14

参考文献2)ナーシングカレッジ 脳神経外科医 石丸純夫 1999/5

参考文献3)BRAIN NURSING 2016 vol32 no.5  (459)

参考文献4)高草木薫:ヒトの脳と運動制御 脳の理解とリハビリテーション

     長崎理学療法7 2006

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齋藤 雄一郎
・資格:理学療法士 ・居住地:埼玉県越谷市 ・活動地域:埼玉県川口市・越谷市を中心にどこへでも ▷執筆者プロフィール詳細

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